コラム

WOODBIOコラム

木質バイオマス熱利用の推進に向けて

〜地域資源を活用した脱炭素社会の実現〜

わが国では、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて再生可能エネルギーの導入拡大が進められている。その中でも木質バイオマスは、森林資源の有効活用と地域経済の活性化を同時に実現できるエネルギーとして注目されている。特に熱利用は、燃料を直接燃焼して熱エネルギーとして利用するため発電利用と比較してエネルギー利用効率が高く、木質バイオマスの特性を最大限に活かせる利用形態である。

木質バイオマスエネルギーの用途とは

日本は国土の約7割を森林が占めており、森林整備や木材生産の過程で発生する未利用材や林地残材が多く存在する。これらを木質チップや木質ペレットとして利用することで、化石燃料の代替が可能となり、二酸化炭素排出量の削減に貢献する。また、燃料の製造から利用までを地域内で完結できることから、エネルギーの地産地消による地域循環共生圏の形成にも寄与する。

木質バイオマス熱利用の導入先としては、公共施設、学校、病院、温浴施設、農業用ハウスなどが挙げられる。特に寒冷地域では暖房需要が大きく、重油ボイラーから木質バイオマスボイラーへの転換によって、燃料費の安定化と温室効果ガス削減の両立が期待される。また、近年では、木質ペレットを燃料とする冷暖房機器の導入も進み、年間を通じた利用が可能となっている。さらに、木質ペレットを燃料とする小型ボイラーやストーブの性能向上が進み、一般家庭への普及も進んでいる。

家庭用ストーブ(出典:山本製作所ホームページ)
暖房給湯ボイラー(出典:巴商会ホームページ)
木質ペレットを燃料とする冷暖房機器(木質ペレット焚吸収冷温水機)
出典:矢崎エナジーシステム株式会社ホームページ

木質バイオマス熱利用の普及に向けて

一方で、木質バイオマス熱利用のさらなる普及には課題もある。設備導入時の初期費用が高いこと、燃料供給体制の確保が必要なこと、運転管理に一定の知識が求められることなどである。これらの課題を解決するためには、国や自治体による支援制度の充実に加え、燃料品質の安定化や人材育成の推進が重要である。

特に木質ペレットについては、品質のばらつきが燃焼性能や機器の運転に影響を及ぼすことから、JAS認証やJPA認証※1などの品質規格に基づく燃料品質の確保と安定供給体制の整備が求められている。高品質な燃料の流通は利用者の信頼向上につながり、熱利用市場の拡大に大きく貢献する。

※1:燃料用優良木質ペレット認証

日本木質ペレット協会(以下、JPA)が行う燃料用優良木質ペレット製品の品質認証。木質ペレットの普及を促進し、消費者に対し品質の安定した優れた燃料用木質ペレットの供給の確保を図ることを目指している。

認証対象のペレットは、ペレットストーブ及び家庭用又は業務用ボイラーに用いる燃料用木質ペレットであり、JPAが定める「木質ペレット品質規格」のうち、JPAの審査委員会が定める品質項目及び品質基準に適合するもの。

木質バイオマス利用は熱利用が重要

今後は、FIT制度を活用した発電中心の利用から、より高効率な熱利用や熱電併給(CHP)への展開が重要になる。木質バイオマス熱利用は、森林整備の促進、地域産業の振興、エネルギー安全保障の強化、さらには脱炭素社会の実現に貢献する有効な手段である。また、第7次エネルギー基本計画や森林・林業基本計画においても、地域資源を活用した木質バイオマス熱利用の拡大が重要施策として位置付けられており、今後さらなる導入促進が期待される。

【表1】 木質バイオマス熱利用の効果

効 果内 容
CO₂排出削減化石燃料の代替による脱炭素化
森林整備促進未利用材・間伐材の有効活用
地域経済活性化燃料製造・輸送・利用による雇用創出
エネルギー自給率向上地域資源によるエネルギー供給
防災・レジリエンス向上地域分散型エネルギーとして活用
執筆者

WOODBIOシニアアドバイザー ⼭⽥ 昌宏(一般社団法人 日本木質ペレット協会 事務局長)