基本設計

基本設計は、事業内容を詳細に検討し、全体的内容に加え、バイオマスボイラー等のエネルギー変換技術及び付帯施設の仕様を具体化し、設備の配置図を作成します。
また、それらを基礎に詳細なコスト分析を行うとともに、稼働状況(設備稼働率、バイオマス代替率、電気使用量等)をできるだけ高い精度で想定します。

我が国は、木質バイオマス熱利用施設の導入台数が極めて少なく、システムの細部についてのコンサルタントの知見は限られています。
そのため、基本設計に当たっては、コンサルタントのみでなく、複数のメーカーからの聞き取りを行うとともに建設業者や設計業者も交え意見交換しながら進めていくことが大切です。

その場合、

  1. バイオマスボイラーは機器ではなくプラントであること。
  2. プラントとしての基本設計であり、プラントの構成、システムの性能把握、主要機器や計装の仕様について検討すること。
  3. バイオマスプラントは高めのイニシャルコストを低めのランニングコストで補うビジネスモデルであり、設備費の削減、運営の効率化には最大限配慮すること。

等に留意する必要があります。

我が国のこれまでの木質バイオマスボイラーは石油ボイラーを代替することを基本とし、おおむね石油ボイラーのあり方が踏襲されてきています。しかし、温水ボイラーシステムについては、2022年3月の労働安全衛生法の改正により、蓄熱タンクによる制御を基本とする欧州で採用されている効率的なバイオマスボイラーシステムの構築が可能となりました。

そのため、今後の導入に当たっては、どのようなシステムを選択すべきかから十分な検討をする必要があります。
ただし、このことについては、最近の動向でもあり、コンサルタント等でも理解されていないところがあるので、事業者等から質問する等の対応が求められます。

コンサルタント等においてそのような動向が理解されていないと折角木質バイオマス熱利用システムを導入しようとしても、最新の動向を踏まえた効率的なシステムの導入がされず、当該コンサルタントの知見の範囲で従来型の対応がされることになります。

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温水ボイラーシステムの新たな展開

基本設計におけるボイラーの選択は、バイオマスボイラーの規模の決定のみでなく、熱供給を担う蓄熱タンクの容量やバックアップボイラーのあり方も含め全体的なシステムとしての検討が必要です。そのためには、詳細な熱負荷分析が求められます。熱負荷分析により稼働率やバイオマス依存率等の推定もできます。
また、熱負荷分析の結果により、ボイラーとして連続運転タイプと断続運転可能タイプの選択を検討することもできます。

このことについてもこれまでのコンサルタントでは詳細な熱負荷分析が行われず、ボイラー規模を算出することを目的とした熱負荷分析で済まされている可能性があり確認が必要です。

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熱負荷分析
ボイラー
ボイラー検索ツール

ボイラーや蓄熱タンクの仕様が決まると、それに適合するように機械室、煙突、サイロ、回路や制御のあり方が決まってきます。

設備の配置や建屋、設備室、燃料サイロ等の建築スペースは、設備システムの選定によって位置や大きさが左右されます。そのため、用地の条件等と合わせて検討します。この場合、建屋は、メンテナンスも含め動き易い機器の配置も考慮した規模を、サイロについては、燃料の搬入し易さを考慮するとともに1週間程度以上の必要量が保管できるような規模を確保することとします。

配置計画の基本的考え方は次の通りです。

  1. 機器や配管は配管経路が極力最短ルートとなる位置に計画する。
  2. 将来の改修工事等も勘案し、機器の搬出入に支障のないように計画する。
  3. システム運転時の人や燃料管理の動線に支障のない計画にする。
  4. 電気関係は漏水などの事故の影響を受けないよう水回りの直下に設けないようにする。
  5. 受水槽やボイラーなどは法規の規制に合致したものとする。

また、それぞれの設備の具体的仕様については、実施設計の段階でも検討されますが、例えば、サイロからボイラーへの燃料搬入装置や、煙突等については、トラブルの発生や燃焼効率等にも影響を与えるので慎重に検討しておくことが求められます。

二次需要先の設備、配管は、バイオマスボイラー設備というよりは建築設備設計の領域となります。

ただし、これらは、バイオマスボイラーシステムの制御に大きな影響を与えるのでシステムとして検討されることが必要です。バイオマスシステムの事業性を向上するためには、熱効率の向上や稼働に必要な電力(多くはポンプ動力)を削減することが重要ですが、そのことは二次需要先も含めて検討する必要があります。化石燃料ボイラーの場合より細心の注意を払って配管径の選定、ポンプ制御方式の選定、配管断熱仕様の検討等を行います。

基本設計におけるコスト分析は、事業を実行するかどうかの最終決定になります。

そのため、できるだけ詳細に積み上げて試算することが必要です。
ただし、イニシャルコストについては、基本的には注文生産的な面もあることから価格情報が公表されていないことが一般的です。複数のメーカー等から聞き取りして積算されることになります。それらを比較考慮するとともに、必要な事項が網羅的に積算されているかを判断することが必要です。

ランニングコストは、燃料費については、必要燃料量と求められる品質を考慮するとともに地域での流通価格に即して積算します。
ただし、価格については、比較的安定しているとはいえ変動があることは考慮しておく必要があります。維持管理・メンテナンス費用についてはできるだけ詳細な検討が必要になります。

特に、これらの経費は事業の初期時から時間を追って増嵩するので、そのことも見込んで積算します。このようなことについてもメーカー等は情報を持っているので、そこから聞き取りします。
なお、定期メンテナンスについては、事業者自らがどこまで行いうるかも検討しておく必要があります。ランニングコストの削減のためには、価格や交換頻度等について情報を把握するとともに、定期メンテナンスによる予防措置の実施やメーカーによる遠隔監視のサポート等も重要です。

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コスト分析・事業性評価

基本設計においては、要求される性能・機能が十分に発揮できる合理的なものとして、衛生性、利便性、安全性、合法性及び環境共生への配慮を念頭に、経済的合理性にかなった計画・設計することが求められます。従って、内容については多角的な視点からその妥当性を判断します。

基本設計のまとめと合わせ、関連法令への適合、資金調達、補助等助成の確保の可能性等を確認し、事業化スケジュールを作成します。事業化スケジュールについては関係者間で共有しておくことが重要です。

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