維持管理・メンテナンスと実績の評価
維持管理・メンテナンス
適切な維持管理・メンテナンスの実施は、円滑な運転の確保のみならず、コスト削減、耐久性の向上にも大きく関与します。
ただし、一方では、点検、清掃等のための運転停止は、事業性を悪化させる可能性があります。
そのため、メンテナンスの内容、頻度を良く検討し計画することが重要であるとともに、実施のタイミングについても運転への影響を配慮して行うことが望まれます。
メンテナンスについては、日常点検と定期メンテナンスに分けられます。日常点検については、運転管理者により行うこととなりますが、機種によっては自動化が進められているので、機種選定ではそのことについても考慮します。
なお、運転状態の確認については、遠隔監視装置が必須になってきています。
定期メンテナンスについては、メーカーにより行われることが多いですが、一般的なことは運転管理者によっても実行可能です。
これらの結果、修繕等が必要となる可能性がありますが、修繕等についても実行可能なものは、運転管理者により行うことが望まれます。
日常点検、定期メンテナンス一覧表
木質バイオマス熱利用(温水)計画実施マニュアル 実行編 表17-1より
メンテナンスは、機器に異常がないか、円滑に稼働できているかを中心に行われますが、さらに実績を確認し性能点検を行うことが重要です。
そのため、そのようなことが可能となるよう必要な計測器を備え付けることが望まれます。性能点検による確認と問題点の把握を繰り返すことによりシステムとしては逐次改善され、より効率的なものになります。
実績の評価
実際に稼働し運営した結果については、きちっとデータを把握し、計画段階で想定したことと比較をしながら、実績を評価することが重要です。そのことにより、円滑に稼働しているか、問題はないか等を検討することができます。
実績の評価
項目 | 内容 | 算出 |
---|---|---|
ボイラー効率 | ボイラー効率は燃料の使用量に影響する。 燃料の使用量とエネルギー密度(低位発熱量)からエネルギー量を計算し実際にバイオマスボイラーから得られた熱量を比較する。 日々の燃料の使用量を把握することは容易でないことから、1か月または年単位で把握する。 エネルギー密度は成分分析の測定機関に依頼して把握するのが望ましい。(平均的水分が想定できれば、大まかに数値を試算することは可能。) 熱量は熱量計で把握する。(ボイラー効率をO2濃度と排ガス温度から求める方式もある。) | バイオマスボイラーから得られた熱量(kWh)÷燃料から供給されるエネルギー量(kWh) |
熱ロス | 効率性を確保していくためには、熱ロスについても考慮が必要である。 熱ロスが多すぎる場合には配管等の断熱性等を見直すことが必要になる。 ボイラーから得られた熱量が需要側で消費されるまでの配管等でロスする熱量を把握する。 熱量は需要側に取り付けられた熱量計で把握する。 | 需要側で消費される熱量(kWh)÷ボイラーから得られた熱量(kWh) |
電気使用量 | 電気使用量は、極力抑制する。電気使用量が多い場合は、インバーター制御を追加する。 ただし、電気使用量の把握は、ボイラーシステム自体にメーターをつけることが必要になる。 そのことができていない場合は、施設全体の電気使用量についてバイオマスボイラー入前と後を比較し増加量を推計し、多すぎないかを検討する。 | ボイラーの熱供給量の3%以内とする。 |
化石燃料使用量 (バイオマス代替率または依存率) | 化石燃料使用量を把握し、バックアップボイラーとして設置した化石燃料ボイラーの稼働が過剰でないかを確認する。 バイオマスボイラーの稼働を優先することが必要で、バイオマスボイラーの定格出力を使い切れているかを確認する。 このことはバイオマス代替率で表される。バイオマス代替率とは施設で消費する熱量のうち、バイオマスボイラーの熱量で賄う割合である。 | バイオマス代替率=バイオマスボイラー由来の熱量÷施設で消費する熱量(バイオマスボイラー+バックアップ石油ボイラーの供給熱量) 代替率としては8割以上が望ましい。 |
不具合件数 | 1年間の不具合件数の推移を把握する。 不具合は、耐火部品、センサー系、燃料系等に分類し、不具合をどのように少なくできるかを検討する。不具合は、需要の繁忙、季節の変化、燃料の品質等が関係するのでそのことにも留意して分析する。 | 不具合件数が多い場合は、メーカー等ともに原因や対策を検討する必要がある。 |
稼働率 | バイオマスボイラーが順調に効果的に稼働しているかどうか分析するため、バイオマスボイラーの稼働時間を把握する。また、稼働率を算出する。 稼働率は、バイオマスボイラーの稼働時間を定格出力で稼働した時間(全負荷相当時間)に換算し、予定された期間の総時間に対する割合を算出する。 稼働時間の代わりに熱量を使うこともある。 バイオマスボイラーが効果的に稼働しているとするためには、稼働率を高めることが望ましいが、稼働率については稼働の実態を踏まえて評価することが必要で、稼働率が低い場合は原因について分析することが重要である。 | 熱量計算の場合 バイオマスボイラーの供給熱量÷バイオマスボイラーの定格ベース期間供給熱量 |
計画と実績の比較 | 計画で示された内容や数値目標に対し、実績がどうなったかを比較し、数値等が異なる場合はその要因について検討し、必要な改善を行う。 |