コラム WOODBIO

防災とバイオマス

停電や災害に強い地域づくりに地域のエネルギーを生かす

〜木質バイオマスボイラーが果たす新たな役割〜

私たちは、普段当たり前のように電気や化石燃料を使っていますが、大規模な災害が発生すると、その「日常」は一瞬で断ち切られてしまいます。送電網や燃料の供給インフラが寸断されたとき、生活を繋ぐために必要な熱や電力をどう確保するか。地震や天候被害など災害の多い日本、特に中山間地域などでは一層重要なテーマだといえます。

このコラムでは、「分散型エネルギー」である薪ボイラーと再生可能エネルギーを組み合わせ、災害に強い拠点づくりを実現している2つの先導的な事例を紹介します。

1. 2016年熊本地震で真価を発揮した「木魂館」(熊本県小国町)

総面積の約8割を森林が占める小国町では、2016年度に2つの取り組みを開始しました。1つが、住民自らが林地残材や間伐材を持ち込むことができる「小国町木の駅プロジェクト」。もう1つが、町内にある温泉・宿泊施設である「木魂館(もっこんかん)」での薪ボイラーです。

この「木の駅プロジェクト」では、住民が自ら林地残材や間伐材を「木の駅」に持ち込み、地域通貨「モリ券」で買い取ることで、森林整備と地域経済の活性化を同時に進めています。ここで集められた木材は、薪に加工されて、上述の木魂館の薪ボイラーで利用されています。

木魂館の薪ボイラーは、温浴施設の熱源として利用されています。また、太陽光パネルと蓄電池を備えており、停電時でも電力と温水の供給が可能となっています。

この木魂館で薪ボイラーを導入した直後、2016年に熊本地震が発生しました。多くの被災者や避難者が町に来る中、太陽光発電と備蓄されていた薪を組み合わせることで、同施設はバイオマスボイラーによる給湯を維持し、「お風呂難民」となった方々へ大浴場を無料開放しました。まさに、非常時の避難所としての機能を果たし、地域の防災レジリエンス(回復力)への貢献を証明した事例です。
(「小国町木の駅プロジェクト」が経済産業省の選定する地域共生再生エネルギー事業顕彰に採択されました。)

木の駅プロジェクトによる、間伐材と薪利用による地域経済の循環
『小国町木の駅プロジェクト』パンフレットより引用
熊本県小国町「木魂館」での太陽光パネル・薪ボイラの様子
(筆者作成)

2. 先進的な熱利用でW受賞を果たした「小菅の湯」(山梨県小菅村)

山梨県小菅村は、多摩川の源流にあたる山あいの地域です。周辺の山林が涵養した水が多摩川に流れ、大都市である東京の水資源を支えています。

そんな小菅村にある温浴施設「小菅の湯」も、2022年に薪ボイラー、太陽光発電、蓄電池、そして太陽熱パネルを組み合わせたシステムを整備しました。やはり、この施設でも、停電時でも電力と温水の供給が可能となっており、災害時の重要な避難施設としての機能も兼ねています。

また、施設の運営者自身が薪の製造・管理に携わることで、意欲的に薪の品質向上や薪ボイラーの維持管理に取り組まれています。その結果、稼働2年目では、1年間の光熱費を約45%削減するという高い経済効果も生み出しています。

これらの多面的な取り組みは高く評価され、2024年度(令和6年度)の「新エネ大賞(新エネルギー財団会長賞)」と「脱炭素チャレンジカップ」をダブル受賞しました。

小菅村の間伐材から薪製造と薪ボイラー他までの一連の取り組み
株式会社リトル・トリー 大野氏資料より引用)

まとめ:日常から非常時まで支えるバイオマスの力

地域にある森林の資源を「薪」というエネルギー源として貯蔵・活用するということは、単なる脱炭素社会の推進や光熱費の安定化だけでなく、非常時のエネルギー自給を可能にするメリットがあります。

これらの事例が示すのは、薪ボイラーが単なる暖房・給湯の「設備」ではなく、「地域の資源の有効利用」と「非常時の安全性」を両立させる「地域の社会基盤」になりうるということです。

バイオマスをはじめとする様々な地域資源・エネルギーを活用し、より強靭で、より豊かな地域が増えてほしいと思います。

執筆者

⼩川 聡志 合同会社もりほっと 代表社員(WOODBIOシニアアドバイザー )

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